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仮想通貨(暗号資産)で出た損失を、ほかの利益や給与と差し引けるのか、翌年に持ち越せるのかを、国税庁・財務省の原文(2026年10月13日確認)で確かめてまとめます。今の制度で決まっていること、改正後に決まったこと、公式に書かれていないことを分けて書いています。
■仮想通貨の損失は、どこまで相殺できるか
この章の出典
国税庁タックスアンサーNo.1500「雑所得」・No.2250「損益通算」(いずれも令和8年4月1日現在法令等)と、国税庁「暗号資産等に関する税務上の取扱いについて(FAQ)」(令和7年12月最終改訂)によります。
今の制度で、損失を差し引ける範囲
1
同じ年の暗号資産の利益
差し引いて計算する
2
副業・年金などの雑所得
雑所得として合計する
3
給与・事業などの所得
差し引けない
4
翌年以降の利益
持ち越せない
暗号資産どうしの損益は、同じ年なら差し引いて計算する
No.1500は、公的年金等以外の雑所得を「総収入金額 − 必要経費」で計算するとしています。暗号資産の売却や交換は銘柄ごとに取得価額を出しますが、所得の金額は、その年の収入と経費を合計して1つの金額にします。国税庁のFAQ 2-8の計算例も、合計した数字から所得を出しています。
国税庁の例:年間取引報告書から所得を計算した場合
| 収入金額 | 売却価額などの合計 5,295,000円 |
|---|---|
| 必要経費 | 売却原価などの合計 3,106,000円(信用・証拠金の差損も、この欄に入る様式です) |
| 所得金額 | 2,189,000円 |
出典:国税庁「暗号資産等に関する税務上の取扱いについて(FAQ)」2-8(令和7年12月最終改訂)の計算例
同じ年に、利益の出た銘柄と損失の出た銘柄があれば、次のように差し引いた金額が雑所得になります。
当サイトの計算:同じ年に、銘柄Aで利益、草コインBで損失が出た場合
300,000円(Aの利益)− 120,000円(Bの損失)
雑所得 180,000円
「暗号資産どうしの損益を差し引ける」と1文で書いた公式の記載は、当サイトが探した範囲ではありません。上の扱いは、No.1500の計算式とFAQ 2-8の計算例から当サイトが整理したものです。取得価額の出し方は、仮想通貨の税金の計算方法|総平均法と移動平均法の手順にまとめています。
副業や年金の雑所得とも、合計して計算する
No.1500は、雑所得の金額を「公的年金等」「業務に係るもの(副業など)」「それ以外」の3つの合計額としています。暗号資産の損失は「それ以外」に入るため、同じ年の副業の雑所得などと合計されると読めます。ただし、暗号資産の損失で公的年金等の雑所得を減らせるかを明記した公式の記載はなく、ご自身の事情で迷う場合は税務署にご確認ください。
■給与と相殺できないのはなぜか
国税庁のFAQ 2-11は、雑所得の計算で出た損失は、給与所得など他の所得から差し引けないとしています。所得税法で他の所得と通算できる損失は、不動産所得・事業所得・山林所得・譲渡所得の4つに限られ、雑所得は入っていないためです(No.2250でも、雑所得の損失は他の所得から控除できないとされています)。
会社員の方が暗号資産で損をしても、給与から差し引かれた所得税は戻りません。年末調整の結果も変わりません。
■損失は翌年に繰り越せるか(今の制度)
今の制度では、暗号資産の損失を翌年以降に持ち越す仕組みはありません。国税庁のFAQ・No.1500・No.2250のどれにも、雑所得になる暗号資産の損失を翌年に繰り越す扱いは書かれていません。「繰り越せない」と1文で書いた公式の記載は見当たりませんが、繰越を定めた規定がない、という整理です。改正後の分離課税で、初めて繰越の規定が設けられました(次の章)。
年をまたいだ損失は、翌年の利益から引けない
所得は、売った日・交換した日の属する年ごとに計算します。上の当サイトの計算で、草コインBを売ったのが翌年の1月だった場合は、銘柄Aの年の雑所得は300,000円のまま残り、翌年の損失はその年の中でしか使えません。
編集部
■分離課税のあと、損失の繰越はいつから使えるか
2026年3月31日に成立・公布された「所得税法等の一部を改正する法律」で、特定暗号資産(金融商品取引業者登録簿に登録されている暗号資産等)を暗号資産取引業者に譲渡した所得は、他の所得と分離して課税されることになりました。あわせて、控除しきれない損失を翌年以後3年内の各年分に繰り越して控除できる規定(租税特別措置法第38条の3)が設けられています。
| 論点 | 中身 | 状態 |
|---|---|---|
| 損失の繰越 | 特定暗号資産の譲渡損失を、翌年以後3年内の特定暗号資産の所得から控除 | 法律で確定 |
| 使える条件 | 損失が出た年に明細書を添付した確定申告書を出し、その後も連続して確定申告書を出していること | 法律で確定 |
| 対象になる損失 | 附則第1条第10号の日以後の特定暗号資産の譲渡で出た損失(附則第39条) | 法律で確定 |
| 始まる年 | 改正金融商品取引法の施行日の属する年の翌年1月1日 | 施行日の政令待ち |
出典:財務省「所得税法等の一部を改正する法律」本文(租税特別措置法第38条の3・附則)、法律案の要綱、令和8年度税制改正の大綱。「始まる年」は大綱の文言による
始まる年がまだ決まっていない理由と、施行日ごとの整理は、仮想通貨の税金:今の計算方法と、税制改正はいつからで書いています。
施行前に出た損失は、繰り越せない
附則第39条は、繰越の規定を「附則第1条第10号に定める日以後」に行う特定暗号資産の譲渡について適用するとしています。大綱も、繰越を「適用開始日」以後の譲渡等に適用するとしています。分離課税が始まる前に出た損失を、始まったあとの利益から差し引くことはできないと当サイトは読んでいます(法律の附則と大綱の文言からの読み取りです)。
繰越が使えない損失:登録簿に載らない草コイン・海外の業者・個人間
| 取引 | 改正後の繰越 | 理由 |
|---|---|---|
| 登録簿に載る銘柄を、国内の暗号資産取引業者に売った | 対象 | 特定暗号資産を暗号資産取引業者に譲渡した場合に限られるため |
| 登録簿に載らない草コインを売った | 対象外 | 特定暗号資産にあたらないため |
| 海外の業者に売った | 対象外(と読める) | 暗号資産取引業者に対する譲渡ではないため |
| 個人間で売った | 対象外(と読める) | 同上 |
財務省の法律案の要綱(第7の1(16))と大綱にもとづく当サイトの整理。海外の業者・個人間は「暗号資産取引業者に対する譲渡」の文言からの読み取りで、個別の扱いは公式に示されていません
さらに要綱は、総合課税の譲渡所得になる暗号資産の損失について、他の総合課税の所得と損益通算しない、と定めています。登録簿に載らない草コインの売却が、改正後に雑所得になるのか譲渡所得になるのかの線引きは、当サイトが確かめた範囲では公式に示されていません。
当サイトの判断
改正後の損失の繰越は、国内の登録業者で登録簿に載る銘柄を売買している方には使える場面がある一方、国内で扱われていない草コインが中心の方には、使える場面が少ないと当サイトは見ています。
- 繰越の対象は、登録簿に載る特定暗号資産を暗号資産取引業者に譲渡した損失に限られる
- 分離課税が始まる前の損失は、附則により対象にならない
- 繰越には、損失の年から連続して確定申告することが条件になる
登録簿に載る銘柄の範囲が広く示された場合や、政令・国税庁の案内で細かい要件が示された場合は、この見方も変わります。
■損失だけの年も、確定申告は要るか
今の制度では、損失を申告しても翌年に持ち越す仕組みがないため、損失を記録に残す目的での確定申告に効果はありません。ただし「損失だけの年は申告しなくてよい」と書いた公式の記載は、当サイトが探した範囲では見当たりません。
損失の年でも、暗号資産の損益を書く場面
- □ 医療費控除・ふるさと納税などで確定申告をする(ほかの雑所得と合わせた金額を書く)
- □ 同じ年に副業などの雑所得があり、確定申告をする
- □ 改正後に、特定暗号資産の損失を繰り越したい(損失の年から連続して申告することが条件)
利益が出た年に申告が要るかどうかの基準は、仮想通貨20万円以下は申告不要?会社員・主婦・年金の場合で、立場ごとに整理しています。
■損失の年の住民税はどうなるか
横浜市の住民税のよくある質問(2026年4月1日更新)は、所得税の確定申告をした場合は住民税の申告がされたとみなされ、しなかった場合は住民税の申告が必要になることがある、と案内しています。ただし、これは所得がある場合の案内で、暗号資産が損失だけの年に住民税の申告が要るかは、公式に書かれたものが見当たりません。お住まいの市区町村にご確認ください。
改正後の分離課税の住民税の扱い(大綱では個人住民税5%)は、地方税法の原文を当サイトでは確かめられていません。確かめられたら書き足します。
■損益を合計するときの手間を減らすには
損失を差し引くには、まず同じ年の取引の損益をすべて合計する必要があります。取引所が複数ある、暗号資産どうしの交換が多い、という場合は、損益計算ツールで履歴を取り込むと、手作業で合計する手間を減らせます。改正後に繰越を使う場合は、損失の年の明細書が要るため、記録を残しておく意味が大きくなります。
年をまたいで記録を残しておくと、申告の前に慌てずにすみます。
- ✔ 同じ年の利益と損失を、銘柄をまたいで合計できる
- ✔ 暗号資産どうしの交換も、交換の時点の価額で計算に入れられる
料金と無料で使える範囲は、クリプタクトの料金と無料の範囲にまとめています。
損益計算ツールについてのご注意
クリプタクトは暗号資産の損益を計算するツールで、暗号資産交換業者ではありません。計算結果は、取り込んだ履歴と選んだ設定にもとづきます。暗号資産は価格が大きく変動し、取引によって損失が生じるおそれがあります。
関連する用語
| 損益通算 | ある所得の損失を、ほかの種類の所得から差し引くこと。雑所得の損失は対象外 |
|---|---|
| 繰越控除 | その年に引ききれなかった損失を、翌年以降の所得から差し引くこと |
| 雑所得 | 給与・事業など、ほかの9種類にあたらない所得。暗号資産の利益は原則としてここに入る |
| 特定暗号資産 | 金融商品取引業者登録簿に登録されている暗号資産等。改正後の分離課税と繰越の対象 |
■仮想通貨の損失についてよくある質問
Q. 株やFXの損失と、仮想通貨の利益を相殺できますか?
A. No.2250では、申告分離課税の株式等の譲渡所得等や、先物取引に係る雑所得等(FXなど)の損失は、それ以外の所得と損益通算できないとされています。今の暗号資産の雑所得とは差し引けません。
Q. 暗号資産の証拠金取引(レバレッジ)の損失はどうなりますか?
A. FAQ 2-12では、今は暗号資産の証拠金取引も総合課税の雑所得です。FAQ 2-8の計算例でも、信用・証拠金の差損は必要経費の欄に入る様式になっています。
Q. 値下がりしたまま持っている草コインも、損失になりますか?
A. FAQは、売る・使う・交換した時点で所得を計算するとしています。持っているだけの値下がりは、手放すまで所得の計算には入らない、と当サイトは整理しています。
■【まとめ】今の損失は同じ年の雑所得の中だけ、繰越は改正後から
仮想通貨の損失は、今は同じ年の雑所得の中で差し引けますが、給与などとは相殺できず、翌年にも持ち越せません。改正後の繰越は法律で決まりましたが、分離課税が始まる前の損失や、登録簿に載らない草コインの損失は対象になりません。
損失の年の住民税や、ご自身の事情で迷う点は、市区町村・税務署・税理士にご相談ください。
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次の疑問 仮想通貨の税金:今の計算方法と、税制改正はいつから › 分離課税が始まる年が、施行日によってどう変わるかを整理しています 比べる 仮想通貨の税金の計算方法|総平均法と移動平均法の手順 › 損益を出す前の、取得価額の計算を数字で追えます 別の道 仮想通貨20万円以下は申告不要?会社員・主婦・年金の場合 › 利益が少ない年の申告と、住民税の手続きが分かります※記事内の情報は、2026年10月13日に国税庁(FAQ・タックスアンサー)、財務省(税制改正の大綱・法律案の要綱・成立した法律の本文と附則)、横浜市の資料で確認した内容です。この記事は一般的な仕組みの説明で、税理士による個別の相談に代わるものではありません。税金の扱いは個別の事情で変わるため、具体的な申告は税務署や税理士にご相談ください。
